パイの食い逃げ

 昔から、セガのプロダクトの斬新さというのは、高く評価されている。それは、当サイトとしても否定するつもりはさらさら無い。しかしながら、斬新さと、それによる利益を重視するあまり、技術的、体制的な下地固めが不足なまま商業ベースのプロダクトとして発表しまう事が多く、結果として、プロダクトの不具合が多い、サポート体制が脆弱である、追随後発メーカーに追い抜かれる等の状況を度々招いている。
 そうして(必然的に)シェアが低下すると、従来ユーザをないがしろ(サポート体制が脆弱なまま)にして、他のパイ(儲けのネタ)を探しに去ってしまうのだ。まさに見つけたパイを食い荒らしては、後始末も無く逃げていくわけだ。

 いわゆる体感ゲームと呼ばれる、大型可動筐体を最初にアーケードに投入したのもセガであったが、追随メーカーが大型可動筐体の開発を進めるにつれ、十分な耐久性検証を行わなかったために耐久性、メンテナンス性に乏しく、可動率の低くなっていくセガの体感ゲームは、徐々にシェアを奪われていった。
 そんな中、セガはコストダウンしつつ、シェアを挽回する手段を探ったが、そのコストダウンはかえって耐久性の低下を加速させた。例えば、それまでナナオの国産品を使っていたモニタを、スーパーハングオン以降はサムソン等の韓国産へと変更したのだ。結果、経年劣化が極端に酷くなったのだ(現在も実機があるなら、見比べてみると良い)。  また、大型可動筐体でのシェアを確保するために、内容的に十分に練り込まれていない体感ゲームを乱発する事になった。しかも、それは旧作の欠点を省みてはいないものであったために、多くの場合、旧作の欠点を継承し、それが積み重なっていったのであった。これも結果としてユーザ離れを誘発し、大型可動筐体の需要の縮小率よりも大きくセガのシェアが下がっていった。
 結局、セガは比較的早期に大型可動筐体の市場からは事実上の撤退をし、パイの食い逃げを果たした。

 コンシューマ機の世界においても、セガは各時代において、かなり高性能な機種を投入していた。それはいずれも、家庭でゲームを楽しむのには十分なものであったが、営業面では慢性的にいくつかの問題を抱えていた。
 一つは、開発環境の劣悪さ(コスト面や、技術面等)によるサードパーティ製ソフトの少なさである。例えば、プレイステーションはDOS/V機で十分に開発が可能であったが、サターンでまともに開発しようとすると、Indigo Indyが必要であった。また、当時提供されていたソフトウェアライブラリも貧弱かつ不具合が多く、折角の高性能を活かすには、開発者が泣く必要があった。
 次に、設計の問題。セガのコンシューマ機の多くは、各種コネクタ部に設計ミスとも言える不具合がある。例えば、サターンの場合は拡張カートリッジ用のコネクタの接触不良、ドリームキャストの場合はコントロールポートの接触不良等であり、これらは、セーブデータの喪失や、ゲーム中のリセット等、ゲーム上では致命的な不具合を度々引き起こす原因となった。
 しかし、さらに大きな問題は、その販売戦略による営業/宣伝の脆弱さと言える。多くのセガのコンシューマ機は、単にコンシューマ機市場のシェアをかじり取るために発表されており、決して腰を据えて販売/維持を行おうという姿勢が見られないのである。主な例としては実際に、マークIIIはファミコンの、マスターシステム、メガドライブはPCエンジンの、サターンはスーパーファミコンとプレイステーション、ドリームキャストはNINTENDO64の、それぞれシェアをかじり取るために発表されており、単一のメーカとしては新機種を乱発し過ぎとなっている。
 このような状況で、かつ、(セガの体質的なものである)前作の失敗や不具合を省みないで新作を出すとなれば、シェアが徐々に縮小していくのは必然であり、事実、プレイステーション2の発表に伴ってコンシューマ機市場での敗北は決定的となり、2001年3月にはドリームキャストの生産を(公式には)中止し、コンシューマ機市場からは完全に撤退した。ここでも、パイを食い荒らした挙句に、ユーザ無視で逃げ出したのである。
 しかしながら、皮肉な事に、そもそもドリームキャストは充分な高性能を持っていた事や、互換CG基板であるNAOMIをアーケードに供出していたため、(公式の)生産中止から5年が経過しても新作ソフトがリリースされた事、コアにWindows CEを使用しており、かつ、内部情報が解析済であり、MIL-CD対応機であれば(実際には、2000年10月以前の生産分はMIL-CD対応機であるため、非対応機の方がごく一部である)CD-Rに焼いたプログラムが起動できるため、同人ソフトが製作され、それが(他のコンシューマ機に多いエミュレータではなく)実機で動くためもあって、2011年現在も十分に現役機種として稼動している

 3Dポリゴン格闘ゲームの分野においては、逆に、セガが撤退するどころか執着する意思を示しているにも関わらず、シェアが減少し、後発の追随メーカに水を開けられる状況にある。
 「バーチャファイター」において、同分野のパイオニアとなったセガであったが、ナムコの「鉄拳」シリーズ、テクモの「デッド・オア・アライブ」シリーズ等がうまくアニメ的要素との融合を果たして、キャラクタの魅力を引き立たせていったのに対して、セガの「バーチャファイター」シリーズは、シリーズが進むに連れ、半端なリアルさへの追求によって、いわゆるロボット工学で言うところの「不気味の壁」に見事に引っ掛かってしまい、(実際には、「3」あたりがその傾向がもっとも強いが)「生気の無く気味が悪い」と批評されるようなキャラ作りになってしまった。
 これも、キャラ作りにおける基本的なセンスや知識の不足や、ユーザの要望や思考を汲み取ろうとする意思の欠如がもたらしたものである。

 ネットワークゲームに関しても、こうした体質は同様だ。一般に「学習能力の無いソニックチーム」と批難されるが、ネットワーク初心者をサーバの管理担当にしたり、コストダウンのために、コアを初心者には扱いの難しいLinuxで作ったりと、サービス開始以前の体制から不十分であった。
 また、一般に批難されているような、前作の不具合を糧としないで新作を出す姿勢から、シリーズ新作を出す度、メンテナンス作業をする度に不具合が生じ、また、その不具合の多くに対しカスタマサポートは、「お客さまの環境のせいです」と返答するという、責任転嫁体質を露呈した。さらには、シリーズ新作を出す度に旧作、旧版へのサポートは一段と脆弱になり、「放置国家」と揶揄されるほどであった。

 そして、次にセガの食指が動いたのは、子供向けカードゲームと、テーマパーク事業であった。

 カードゲームと言えば、セガがタイトーの発売した(開発は韓国のD-GATE)「ダイノキングバトル」を訴えた事は記憶に新しいかも知れない。この件に関しては、「ダイノキングバトル」がセガの「恐竜キング」に類似しているから訴えられたと勘違いしている人が多いかも知れないが、それは事実とは違う。
 実は、「ジャンケンバトルシステム」の特許の侵害に関してなのである。そもそも、「ジャンケンバトルシステム」自体が特許に値するかは大いに疑問だが、セガが「ムシキング」のヒットに続いて、もう一儲けを狙って「恐竜キング」を作っていたところ、「ダイノキングバトル」が先にリリースされてしまったため、それによってパイを奪われるのを危惧したセガ側は、本来問題となるであろうゲーム自体の類似性ではなく、「ジャンケンバトルシステム」の特許を盾として販売中止の仮処分申請をしたのである。
 自らは平気で法律違反をするセガだが、こと自らのパイへの侵害に関しては、汚いまでに法律を盾にしているわけである。

 テーマパーク事業では、屋内型テーマパークを主に展開してきたが、その中で東京ジョイポリスで起きた死亡事故は、(ごく一時的にではあるが)世間の批難を浴びた。しかしながら、その死亡事故さえ、起こるべくして起こったと見る向きも少なくない。
 プレイヤの分身とも言えるセーブデータの、ロスト等を多発させているセガ。言ってみれば、ゲームの世界における大量殺人のようなものである。それだけユーザの事を軽視しているセガであるから、ユーザの命を軽視したとしても、何ら不思議は無いのだ。

 そして、セガサミーはみなとみらい21へのテーマパーク建設を睨んで、(ピューロランド等でテーマパーク運営の実績のある)サンリオの株を買い増しし、その筆頭株主となった。今度は、過去の経験を生かす事が出来るのだろうか?
 そして、そのパイを食い荒らした後、セガはどこへと向かうのであろうか?



 子供相手、テーマパーク、そして、次に何を食い荒らしに行くのか? あるいは、次の食い物が見つからずに餓死してくれれば、ようやくまっとうな転生も期待出来るのかもしれないのだが……。


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